2020.12.21配信
「師走の大雪」
「今年はホワイトクリスマスになりますか?」12月中頃になるとよく質問を受けますが、そんな気分も一気に吹き飛びました。今年(2020年)12月15日~16日を中心に日本海側は大雪になりました。
大雪の原因は日本海の海面水温が高かったことです。そもそも12月は1月や2月に比べると海面水温は高い上に、今年は平年よりも2℃くらい高く、その上空に平年より5℃以上低い寒気がやってきたため雪雲が発達しました。水蒸気をたっぷり含んだ雪雲が日本海側に流れ込み、24時間または48時間降雪量が群馬県みなかみ町や新潟県湯沢町では観測開始(みなかみ1989~、湯沢1982~)から最も多くなり、関越自動車道では立往生が発生し、湿った重い雪のため倒木や停電の被害も発生しました。
昨シーズンはほとんど降っていなかったことも重なり、油断していたかもしれません。今シーズンはラニーニャの影響もあり、日本海側は雪が多くなる予想です。大雪にご注意ください。
2020.11.20配信
「赤いモミジ」
モミジが真っ赤です。最寄り駅までの通勤途中にカエデの木が2本あります。今年の紅葉はきれいですね。
この2本のカエデは私に季節感を与えてくれます。春は芽吹き、初夏は新緑と小さな赤い花、夏には竹とんぼを小さくしたような種が付きます。そして晩秋は赤く色づき、初冬に葉っぱを落とし足元に広がります。
さて、カエデの紅葉は日差しによって赤く染まります。今年は10月下旬から11月中頃にかけては晴れた日が多く、東日本や西日本の日照時間は平年の1.3倍前後もありました。
カエデは、南に面した日の当たる所は真っ赤に染まりますが、北側や幹に近い日があまり当たらない葉は赤と黄色が混じったオレンジ色になります。
遠くから真っ赤に染まっている木々を見つめるも良し、木の近くによって色のグラデーションを感じるのも良し。間もなくすると木々は葉を落とし、色が少ない季節がやってきます。自然の色を楽しみましょう。
「晩秋は季節の色の終盤よ」
2020.10.20配信
「秋の霧」
学生時代に広島県の三次で霧の観測をしていました。霧の全容の解明は難しく、まさに五里霧中でした。
秋は盆地でよく霧が発生します。移動性高気圧に覆われた夜、晴れると放射冷却が強まり、山の斜面からは冷気も流れ込み、盆地に冷たい空気がたまります。盆地には川が流れているので、水蒸気は豊富、前日に雨が降るとさらに水蒸気量が多くなります。その水蒸気が冷やされて、霧になるのです。霧の厚さは100ⅿ前後なので、山の上から見ると雲海と見えるのです。
気象庁では150以上の地点で霧の観測を行っています。去年までの10年間を調べると、10月~12月の三カ月で最も霧の日数が多い地点は熊本県人吉で三カ月平均47日、次いで長野県軽井沢の42日、岡山県津山の39日と続きます。2日に一回は霧が発生していることになります。
多くの地域での濃霧注意報の基準は見通しが100ⅿ以下です。車の運転が困難になりますので、気を付けましょう。
「霧発生 安全運転 切り替えて」
2020.9.18配信
「来春のスギ花粉」
来春は花粉症の方にとっては過ごしやすい年になりそうです。
スギの花芽が作られるのは、関西では7月ぐらいです。7月の気温が高く日差しがたっぷりある(空梅雨)と花の芽は多くなり、逆に気温が低く日差しが少ない(梅雨らしい梅雨)と花の芽は少なくなる傾向があります。
今年の7月は梅雨が長引き、我が家の近くの神戸では124年間の観測の中で、7月の降水量は2番目に多く、日照時間は2番目に少なくなりました。気温も平年よりも1.1度低く、花芽を着けるには非常に条件の悪い7月でした。
実際どうなっているのかを近くの神社にあるスギの木を見に行くと、例年大量に花芽を着けている木ですら、花芽の数は少なく、探すのに苦労するぐらいでした。
コロナ禍の中では鼻をかむ行為やくしゃみをすることに気を使いますが、来年の春はくしゃみの回数も少なくなり、花粉に関しては気が楽なシーズンになりそうです。
「スギ花粉 少なスギで ちょうど良い」
2020.8.20配信
「チベット高気圧」
今年8月半ば、連日熱帯夜、猛暑日となり、テレビでは命に関わる危険な暑さと表現していましたが、慎重な行動が求められる暑さになりました。観測史上最も気温が高くなった所も多く、浜松では41.1℃(8月17日)まで上がり、国内最高気温に並びました。
暑さの原因は、二つの高気圧です。西日本や東日本は太平洋高気圧に覆われ、その上空にチベット高気圧が張り出し、高気圧が2つ重ったことで猛烈な暑さになったのです。
チベット高気圧は標高が5000ⅿ前後もあるチベット高原が夏の日差しで温まりその上空(1万ⅿ以上)の空気も暖かくなることに加え、東南アジアなどで発達した積乱雲(水蒸気から雨粒に変わることに伴う熱の放出)により上空の空気がさらに暖かくなることで発生する高気圧です。この高気圧に覆われると猛暑になることが多く、2018年も熊谷で41.1℃まで上がりました。
9月も暑さは続く予想です。早く高気圧の勢力が弱くなることを願います。
2020.7.20配信
「令和2年7月豪雨」
今年も豪雨が発生しました。被害に遭われた方に心よりお見舞い申し上げます。
私は熊本県で豪雨が発生した7月4日早朝の気象情報を担当していました。午前3時過ぎ放送局に到着。その時すでに東シナ海に端を発した線状降水帯が熊本県の天草から球磨地方にかかり続けていました。レーダーの解析による記録的短時間大雨情報(1時間降水110㎜相当)が同じような地域に何回も発表され、午前4時50分に熊本県の天草・芦北地方や球磨地方などに大雨特別警報が発表。午前6時30分には球磨川に氾濫発生情報が発表。
気象情報では、現在の雨や河川・土砂の状況と数時間先の予想、垂直避難を繰り返し呼びかけ続けましたが、時間の経過とともに被害の全容が明らかになると、圧倒的な自然の猛威に対し無力な自分を痛感させられてしまいました。
毎年のように発生する豪雨災害。正確な予報や避難情報をいかに早く届けるのか、大きな課題を頂いた状態が続いています。
2020.6.19配信
「リモート出演」
新型コロナの影響で、仕事のやり方がだいぶ変わりましたね。私も自宅で仕事をすることが多くなり、4月からは天気予報の出演をリモートで行うことが何回かありました。
放送局まで出かける必要が無いので、交通費は掛からないし、移動の時間も掛からないので、とっても楽なのですが、家での準備にかなり気を使いました。
テレビの画面に姿が映ることになるので、せめて上半身だけでもキッチリした服を着ないといけませんし、部屋の様子も映るので、それなりに片付けないといけません(バーチャルの設定もできますが、センスを問われそうです)。なおかつ家族には静かにしてもらわなくてはなりませんし、電話の音、宅急便の呼び鈴など、結構気を使わないといけないことが多く、日常の生活の中に非日常であるスタジオを持ってくるのは難しいことがよく分かりました。
そこで一句「部屋映る 書斎の本を 入れ替える」。専門家のように見せるのは難しいぞ。
2020.5.20配信
「リラックス」
4月以降、在宅時間が長くなっていますが、運動と気分転換を兼ねて、自宅の周りを散歩に出かけています。
私が住んでいる兵庫県西宮市の市の木はクスノキで、市役所周辺には樹齢600年を超える巨樹があります。クスノキは常緑樹なので、常に葉っぱに覆われていますが、初夏は変化が現れます。黄緑色の若葉が出て、小さい花を咲かせます。木全体が黄緑色に包まれ新緑の季節がやってきたことを知らせてくれます。若葉が出ると同時に古い葉は落ちて、根元には落葉が積み重なります。木の下にたたずむと、目には新緑、足下にはやわらかい落ち葉、深呼吸をするとほのかな香りも届き、五感で初夏を感じることができます。
クスノキの大木は何百年も同じリズムで時を刻んできたのでしょう。今年は変わらないものの下にいるだけで穏やかな気持ちになれます。
そこで一句「クスノキに 癒され心 リラックス」 来年の新緑はどのような気持ちで迎えているでしょうか。
2020.4.20配信
「布団干し解禁日」
新型コロナの影響がだんだんと大きくなっていますが、皆さんお元気でお過ごしでしょうか?
4月に入り私も自宅で仕事をする時間が長くなっています。自宅が密閉空間にならぬように、窓を開放したいのですが、花粉症の私にとって窓を開ける行為は仕事を放棄することを意味します。
しかし、今年は2月・3月の気温が高かった影響で、スギ・ヒノキ花粉の飛散は(兵庫県西宮市の我が家の観測では)、例年よりも10日前後早くなり、スギは4月初めで終了、ヒノキも4月半ばでほぼ終了となりました。この原稿を書いている4月16日は日差しに恵まれ、ベランダでの洗濯物・布団干しの解禁、窓解放の解禁日となりました。
風に揺れる洗濯物の横で鉢植えの牡丹の花が開花し、春から初夏へ切り替わるスイッチ(ボタン)は押されたようです。季節は確実に進んでいます。私たちも一歩一歩前に進む気持ちだけは忘れずに、次の季節は明るい気持ちで迎えたいですね。
2020.3.19配信
「東京と神戸のサクラ」
今年の東京のサクラ開花は3月14日。統計を取り始めた1953年以来最も早い開花となりました。平年より12日も早い開花です。一方、私の自宅から近い神戸のサクラは3月18日時点で、やっと膨らんできた程度で、開花まであと1週間程度はかかりそうです。
この差は? 2月中旬から3月14日までの平均気温は東京・神戸ともに9.9℃です。同じならば同じように膨らんでも良さそうですが、その前の1月下旬から2月上旬の気温は、東京は6.8℃なのに対し神戸は7.8℃で、1℃も差がありました。
サクラのつぼみが膨らむには、一定期間寒さにさらされ休眠から目覚める「休眠打破」が必要です。今冬は記録的な暖冬となりましたが、一年で最も寒い時期の気温は東京の方が低かったため「休眠打破」がしっかりと行われ、つぼみの生長が早くなったと考えられます。
そう、私の頭がぼーっとしているのは冬の寒さが足りなかったせいかもしれません。今年だけではありませんが。
2020.2.20配信
「異常に暖かい冬」
今冬はかなり気温の高い冬になりました(この文章を書いている段階ではまた冬は終わっていませんが)。1月の平均気温は100年以上の観測(気象台や旧測候所71地点)の中で、最も高かった地点が52地点もあり、特に東日本や西日本は平年より3度前後高く、今までの記録を大幅に塗り替える高温の1月となりました。
1月なので気温がかなり高くても過ごしやすいぐらいで、さほど異常な現象だとは思いませんが、異常気象は30年に一度起きるか起きないかの現象のことを言うので、100年に一度は疑いのない異常気象です。8月に平年より3度高いとなれば、熱中症にかかる方が増えるなど大きな問題になっていたことでしょう。
1月の高温は偶然の現象なのか、今後の警鐘となる現象なのか?ここ最近増加している猛烈な雨や40度を超える猛暑などから考えると、極端な現象が起きやすくなっていることは間違いないと思います。確実に気象状態は変わっています。
2020.1.20配信
「今年は早スギ花粉」
そろそろ花粉のシーズンが始まります。今年の花粉は多いのか?少ないのか?
今年はほとんどの所で去年と比べると少なくなる(半分以下)予想です。花芽は前年の7月ぐらい(梅雨の頃)に作られます。梅雨時期に気温が低いと作られる花芽は少なく、空梅雨で高温になると多くなる傾向があります。前年の梅雨は梅雨寒でした。実際にスギの木に着いている花芽の数は去年に比べると少ないため、シーズン中に飛散する花粉も少ないと予想されています。
ただ、今冬は気温の高い状態が続いています。飛散の開始やピークは例年よりも早くなりそうです。すでに関東以西の太平洋側では1月から少ないながら飛び始めている所も多く、花粉症の症状が出始めている方もいらっしゃいます。私はまだ症状は出ていませんが、そろそろ耳鼻科で薬を処方してもらい、シーズンに備えなければとならないと考えております。
今年の対策は早スギぐらいがちょうど良いかもしれません。