南利幸さん連載コラム(メルマガより抜粋)

2024.10.18配信

「盆地霧」

 晩秋から初冬にかけては霧の季節です。国内の霧の日数を観測している150以上の地点で、10月から12月の三か月間で最も多い所(最近10年平均)は、熊本県の人吉、次いで長野県の軽井沢、岡山県の津山、山形県の新庄、兵庫県の豊岡と続きます。軽井沢も佐久盆地の一部だとすると、盆地で霧が多く発生しています。いわゆる盆地霧です。盆地は川が流れているので水蒸気が豊富です。夜晴れて風が弱いと盆地に冷たい空気がたまり、水蒸気が凝結することより霧が発生します。

霧が発生した盆地の中にいると数十メートル先も見えないことがしばしばあり、車の運転など日常の生活にとっては非常に厄介な現象です。ただ、霧の厚さは100メートルぐらいなので、盆地周辺の山の上から見ると雲海として幻想的な景色を見ることができます。兵庫県の竹田城跡や福井県の越前大野城など観光資源にもなっています。厄介な現象も見方をキリ変えると役に立つこともありますね。

2024.9.20配信

「暑さは彼岸まで?」

 「涼しくなってほしい」まさに悲願です。今年は9月中旬になっても真夏の暑さが続いています。35℃以上の猛暑日になる所も多く、各地で最も遅い猛暑日を記録しています。我が家の近くの神戸では、9月1日~18日までの最高気温の平均は33.4℃、8月上旬の平均が32.7℃なので、8月上旬よりも気温の高い状態が続いています。例年よりも太平洋高気圧の勢いが強く、特に西日本では秋の空気が全く流れ込んできていません。

我が家では冷房のスイッチを切るわけにもいかず、天気予報では熱中症注意の呼びかけをやめることもできず、生活や仕事の上でも今までと違う9月になっています。

暑さ寒さも彼岸までと言います。今年のお彼岸は919日~25日です。普段だと9月下旬には暑さが収まり、西日本でも30℃以上の真夏日の出現も少なくなります。しかし、長期予報では今年はお彼岸を過ぎても気温の高い状態が続きそうです。秋は秋でも暑さはもう飽き飽きですが。

2024.8.20配信

「暑すぎる」

今年の夏も暑いですね。猛暑日が連日のように現れ、私が住んでいる兵庫県内も8月中旬の段階で過去最多の猛暑日を記録している所も多くなっています。

この暑さで7月末に熱中症にかかりました。昼過ぎから夜にかけて屋外にいたこともあり大量に汗をかき、頭痛が止まらなくなりました。水分は取っていたのですが、水やお茶だったのが良くなかったのでしょう。塩分が入っている冷たいスポーツ飲料を飲むとやっと症状が収まりました。

 それとこの暑さで、ベランダの鉢植えの植物が葉っぱを落とし始めています。水は朝と夕方の2回あげていたのですが、蒸発の方が速かったようで、梅やキンカンが秋でもないのに葉が茶色になり、枯れたようになっています。

今まではこのようなことはありませんでしたが、今年のような危険な暑さが続くと、人間の体もベランダの植物も対応するのが難しくなっているのかもしれません。

「暑すぎる ホットけないぞ 温暖化」

2024.7.19配信

「セミの羽化」

昨日(71720時ごろ)のこと、駅から自宅に帰る途中、セミの幼虫が歩道を歩いていました。羽化するための場所を探して歩道をさまよっていた模様です。この時期になると良く出会います。このままだと誰かに踏まれるかもしれないし、車道に出ると車にひかれるかもしれないので、家に持ち帰りました。家の壁につかまらせると、さっそく羽化が始まり、2時間もするとセミの形に。クマゼミのメスでした。朝を待ってベランダから旅立ってもらいました。

 梅雨明けが近くなると我が家の周囲では、クマゼミが朝からうるさいくらいに鳴き始め、その鳴き声で本格的な夏がやってきたことが分かります。今年の夏は、かなり厳しい暑さになりそうです。最高気温は35度を超える猛暑日や最低気温は25度を下回らない熱帯夜が連日のように続きそうです。熱中症には十分注意をして、暑い夏を乗り切りましょう。 

「セミが羽化 うかうかできない 暑さ来る」

2024.6.20配信

「遅い梅雨入り」

今年の梅雨入りは全国的に遅れています。平年よりも沖縄は11日遅れ、九州北部は13日も遅れました。近畿や関東甲信はこのコラムを書いている619日現在でも、まだ梅雨に入っておらず、10日以上遅れています。

「梅雨入りが遅れると梅雨明けも遅れるでしょう」と言われることがよくありますが、過去の梅雨入りが遅かった年を調べると、梅雨明けが大きく遅れたことはなく、平年並みぐらいで明けている年がほとんどです。そうすると梅雨の期間は平年よりも短くなります。しかし、短くなっても梅雨の期間で降る雨の量は平年よりも多いことがあり、梅雨が短いからと言って大雨の心配がないわけではありません。 

今年は梅雨の序盤がなく、梅雨に入った途端に梅雨の最盛期となり、いきなり大雨に見舞われることが考えられます。今年も大雨には油断をせず、ハザードマップなどで住家や周辺の状況を把握して、災害から身を守るようにいたしましょう。

2024.5.20配信

「沖縄の梅雨入り」

沖縄の梅雨入りの平年日は510日頃、この原稿を書いている日は520日。きょうも梅雨に入る気配はなさそうなので、すでに10日は遅れていることになります。

この時期によくご質問を受けるのは、「沖縄の梅雨入りが遅いと、本州の梅雨入りも遅くなる?」ということです。

そこで調べてみると、ほとんど関係ないことが分かりました。例えば2018年、沖縄の梅雨入りは61日で平年と比べると22日も遅くなりました。この年の関東甲信の梅雨入りは66日で平年より1日早く、近畿は65日で平年よりも1日早くなりました。

基本的に梅雨前線は南から北に向かって北上していきますが、徐々に北上するのではなく、突然北上することもありますし、なかなか北上せず停滞することもあります。

ただ、沖縄の梅雨入りは、そのほかの地域も大雨の季節が間近に迫っているサインです。ハザードマップを確認するなど準備だけは怠らないようにしないといけません。

2024.4.19配信

「黄砂が飛んできた」

きょうは418日、黄砂が飛んできました。我が家(兵庫県西宮市)から見える六甲山がきょうはぼんやりとしか見えていません。

この時期は顕微鏡でスギやヒノキの花粉を数えるのを日課としていますが、花粉とともに黄砂も顕微鏡で見ることができます。我が家に飛んでくる黄砂の大きさは花粉の10分の1程度、花粉の直径が0.04㎜ぐらいなので、黄砂は0.004㎜ぐらいになります。多い日には1平方センチメートル当たり何千個の黄砂が落ちてきています。山が霞んで見えるのもうなずけます。

黄砂は中国奥地のゴビ砂漠やタクラマカン砂漠から飛んでくるので、黄砂が飛んでくる日数は西の方が多くなります。福岡は年間7日ぐらい、大阪は5日、名古屋は3日、東京や仙台・札幌は1日から2日程度です。時期は晩秋から初冬にも飛んでくることがありますが、3月から5月に飛んでくることがほとんどです。 

車や手すりは汚れるし、目もゴロゴロします。砂は砂でも嫌ですな。

2024.3.19配信

「天気予報と日の出」

気象キャスターになって35年ぐらいなりますが、そのうち20年以上は早朝の天気予報を担当しています。

朝一番の天気予報は6時前。天気予報には天気カメラが付き物で、映っている様子を見ながら、雲が出ているのか、晴れ間があるのか等のコメントをします。

外が明るければよいのですが、問題は暗い時期です。雲の様子は見えないし、雨が降っていることすら分からないこともあります。傘をさしている人や車のワイパーが動いているのが映っていれば、雨が降っていることが分かるのですが、6時前は人も少なく、確認が取れないことが多いのです。

東京で6時前が暗い時期は11月中旬から2月下旬まで、大阪は東京より15分程度日の出が遅いので、11月初めから3月初めまでは暗い状態が続きます。

3月はやっと明るくなり、天気のコメントがしやすくなる時期です。光の春とは言いますが、早朝の気象情報を担当する身にとって3月は朝の明るさを実感する時期です。

2024.2.20配信

「気温の変動」

今年の2月、4月並みの気温の日もあれば、真冬並みの気温の日もあり、何を着てよいのかも分からず、体がついていかないですね。

全国的に気温の変動が大きくなる月を調べました。前日との最高気温との差を全国の47都道府県庁所在地で調べ、全国の平均を取りました。1番変動が大きな月は3月、2番目が5月、3番目が4月、4番目が2月でした。つまり変動が大きな季節は春です。春は大陸から寒気が流れ込むこともあれば、南から暖気がやってくることもあり、暖気と寒気がせめぎあう季節です。たった1日で空気が入れ替わることもあるため、前日と比べて急に寒くなることもあれば、暖かくなることもあるのです。

2月は春に向かう入り口です。暖かいからと言って油断せず、暖かいのは一瞬で、2月は必ず寒さが戻ってきます。体調を崩すことなく、変動の大きな時期を服で調節しながら上手に乗り切りましょう。 

「ダウン着て あまりの暑さに ダウンする」

2024.1.19配信

「寒さの底」

まずは、能登半島地震により被害にあわれた皆様、心よりお見舞い申し上げます。寒さが一層厳しくなる時期での地震発生なので、凍えるような日々を迎えているのではないでしょうか。私は29年前の117日の阪神大震災で被災をしましたが、あの時も電気やガスが止まり、暖を取ることが難しく、春を待ち望んだことを覚えています。

1月下旬から2月上旬にかけては1年で最も寒い時期になります。どの日が年間で最も気温が低くなる「寒さの底」なのかを、過去50年間の最低気温で調べると、石川県輪島市は25日ごろ、東京は125日ごろ、大阪は131日ごろでした。(東京や大阪に比べると輪島の寒さの底が遅れて出現しているのは、海水温の影響だと思われます)

今年はいつもの冬と比べると暖かい日が多くなっていますが、暖冬とはいえ体に応える寒さが定期的にやってきています。もうしばらく防寒対策をしっかりして寒さを乗り切りましょう。春は必ずやってきます。

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